クロウサギと共生の絵本製作 徳之島地区自然保護協
2020年10月04日
国の特別天然記念物アマミノクロウサギによるタンカン樹木の食害被害が近年、徳之島で急増している。徳之島地区自然保護協議会(美延治郷会長)はこのほど、タンカン農家とクロウサギが共生する地域づくりを紹介する絵本「なかよしのしるし」を製作した。美延会長(64)は「世界の宝のクロウサギをどうやって守るかをみんなで考え、農作物被害を受ける農家に恩返しができれば」としている。
島内最大の生産地の徳之島町によると、クロウサギによる町内のタンカン食害は2017年度に初めて確認。19年度からは被害園地の樹木の周囲に食害防護柵を設置したものの、同年度の被害面積は18年度の41アールから630アールへ拡大している。
同協議会は19年度から「とくのしま共生プロジェクト」を展開し、タンカン食害を受けた農家に対する防護柵設置の推奨や、農家とクロウサギの共生によるタンカンの高付加価値化に向けた活動に取り組んでいる。
絵本は全18ページ。食害の実情やこれまでの活動を紹介しているほか、クロウサギを保護しながら栽培したタンカンのPRも行っている。2月にはタンカンとともに徳之島町内の児童に配布し、同町ふるさと納税の返礼品にタンカンを選んだ納税者にも返礼品と一緒に発送する。
同協議会は今後、▽一般の人が防護柵の設置やタンカン狩りを楽しむエコツアーの仕組みづくり▽クロウサギとの共生、共存を表現したタンカン発送用段ボールの製作▽K│GAP(かごしまの農林水産物認証制度)取得の推奨│に取り組む。クロウサギとの共生で自然保護をアピールしてタンカンの高付加価値化を実現し、生産農家の所得向上を目指す方針だ。