奄美トレイル 全線開通 群島550キロ、自然・文化を発信
2021年02月12日
世界自然遺産
奄美・沖縄の世界自然遺産登録を見据えて、県がルート選定を進めた「世界自然遺産 奄美トレイル」は1月、奄美群島の14エリアで総延長約550キロのコースが「全線開通」した。奄美ならではの自然や文化に触れ合える長距離歩道の完成に、県自然保護課世界自然遺産推進室は「島内外に魅力を発信して、多くの人に楽しんでもらえるトレイルにしていきたい」と意欲を示した。
奄美トレイルは、奄美群島固有の自然や文化への理解を促進し、人と人との交流を通して「奄美ファン」を創出し、群島全体の地域経済や産業の振興を図ろうと、県が2016年度にコース選定を開始した。
初年度にモデル地区として着手した奄美市住用町、伊仙町、沖永良部島(和泊町、知名町)を皮切りに、奄美12市町村の14エリア51コースで順次コースづくりを進めた。今年1月20日に瀬戸内町の加計呂麻・請・与路エリアが開通し、奄美群島をつなぐ長距離歩道が完成した。
コース選定には住民らが参加。エリアごとに勉強会やワークショップを重ねてそれぞれの地域の魅力を探った。よく知られた観光スポット以外にも、車で通るだけでは気付きにくい見所を話し合い、現地を歩いてコースを確認。夕日を望む海岸線やサトウキビ畑、ガジュマルの巨木、サンゴ石垣、城跡など、島々を満喫するトレイルに仕上げた。
県は各コースにルート図や見所を紹介する総合案内、誘導標識を設置。エリアごとにトレイルマップを作成し、体制が整ったエリアから1部500円で販売している。
コース選定に関わった九州自然歩道フォーラム代表の野元尚巳さん(62)=鹿児島市=は1月5日から、喜界島を皮切りに全てのコースを歩く「全線踏破プロジェクト」に挑戦している。トレイルの魅力発信と認知度向上が目的。各島を巡り、計画では今月13日に与論島でゴールする。
野元さんは「住民の皆さんと宝探しをするように選んだコース。奄美はどこでもはっとする景色があり、歩くと地域を愛する気持ちが伝わってくる」と奄美トレイルの魅力を語る。「旅をするように、目線を変えてふるさとを歩くと新たな発見がある。まずは地元の人たちに歩いてもらいたい」と呼び掛けた。
トレイルコースが開通した後も、各島ではなかなか利用に結び付いていないのが現状だ。県自然保護課世界自然遺産推進室の担当者は「地元の人にもあまり知られていない。情報発信と利用の定着が課題」と話す。鶴田晃紀室長は「地元で愛されながら、多くの人に長く使ってもらえるように、地元と協力して魅力を発信する取り組みを継続したい」と述べた。