徳之島で希少なベンケイガニ発見 分布の北限記録に
2019年03月29日
徳之島西部の浅間湾屋洞窟(天城町浅間、通称ウンブキ)で、ベンケイガニ科の希少なドウクツベンケイガニが見つかったことが分かった。沖縄島の洞窟でも発見され、両島で初記録。これまでに先島諸島やフィリピンだけで生息が確認されており、徳之島が分布の北限記録となる。沖縄県立芸術大学の藤田喜久准教授と鹿児島大学国際島嶼(とうしょ)教育研究センター奄美分室の藤井琢磨特任助教が23日付の学術誌に論文を発表した。
ドウクツベンケイガニは、洞窟内の海水と陸側から流れ込む淡水が混じり合う「アンキアライン」と呼ばれる暗い水域に生息。生息環境が特殊なため分布は局所的で、レッドリストで環境省は「情報不足」、沖縄県は絶滅危惧ⅠB類に位置付けている。
これまでは沖縄の多良間島が北限。沖縄島では宜名真海底鍾乳洞(国頭村、通称辺戸ドーム)で見つかった。
徳之島の浅間湾屋洞窟は、海岸線から400メートル離れた内陸に開口部がある水没鍾乳洞。淡水と海水が混じり合うアンキアライン環境が形成されているという。洞窟内で見つかったイワアナゴ科の希少な「ウンブキアナゴ」が2014年に国内初記録と確認された。
藤井助教は17年10月、NPO法人徳之島虹の会の協力を得て浅間湾屋洞窟で調査を実施。洞窟の開口部付近、水面の上約2メートルの壁面にドウクツベンケイガニの雌1匹を見つけて採集。藤田准教授が画像を確認して同種と同定した。
見つかった個体は甲幅約16ミリ、甲長約13ミリ。通常のカニと比べて脚が長く、赤みがかった体色が特徴。
本種の発見を受けて、藤井助教は「奄美群島にはいまだ多くの生物資源が日の目を見ずに存在している」と可能性を示し、「アンキアライン環境はウンブキ以外にも存在していると思われる。調査研究が進んで島ごとに特徴的な環境や生息する生物への理解が進むことを期待している」と述べた。