新種「アマミヤツシロラン」 地元植物研究家らが発見 奄美大島・徳之島
2019年08月02日
奄美大島と徳之島の山中でランの新種が見つかり、「アマミヤツシロラン」と命名された。地元の植物研究家らのグループが発見。神戸大学大学院の末次健司准教授(生物学)が新種と確認し、2日付の国際学術誌に論文を掲載した。きれいな花をつける種が多いランの仲間だが、新種は花が開かず結実する珍しい特徴を持つという。
アマミヤツシロランはオニノヤガラ属のラン。高さ2~4センチ。長さ1センチ程度の褐色の花を1株に1~5個つける。光合成を行わず、キノコやカビの菌糸を根に取り込み、消化して生育する菌従属栄養植物の仲間。地上に姿を現すのは開花期など短い期間に限られ、見つけるのは非常に困難とされる。
発見したのは、奄美の植物を調査している奄美シダ類研究会の森田秀一さん(61)=奄美市名瀬、田代洋平さん(38)=同、原千代子さん(64)=同、山室一樹さん(58)=大和村=の4人。両島でそれぞれ調査をしていた2019年3月に発見し、標本を神戸大に送った。
末次准教授が調べたところ、新種は台湾に分布し、屋久島で15年に国内で初めて発見された同属のタブガワヤツシロランに似ているが、花が開かずに結実することや、唇弁など花びらの形が違うことから新種と確認した。
4人は17年ごろから一緒に調査を行っている。「一人よりも、メンバーで情報を共有することで発見につながった」と森田さん。今回の発見に、田代さんは「奄美のポテンシャルの大きさに圧倒される。調査をしていて楽しい」と喜ぶ。
森田さんは奄美大島で昨年5月にも、同じ菌従属栄養植物の新種アマミムヨウランを発見した。同島では近年、新種以外にも初記録種など希少な植物の発見が相次いでいるが、十分に保護されていない場所も多いという。
原さん以外は特定外来生物マングースの防除を担う奄美マングースバスターズのメンバー。日々山に入って作業をしているが、間伐で姿を消す希少な植物もあり、危機感を募らせる。山室さんは「希少種が集中する場所は手を加えないでほしい。保護をすることで、世界自然遺産としての価値も高まる」と訴えた。
末次准教授は「豊かな森にすむ菌類に支えられた菌従属栄養植物の発見は、奄美大島の照葉樹林の重要性を示すもの。地域の現状について多くの人に関心を持ってもらいたい」と語った。