希少種 逃走で急速進化? 奄美大島 在来ガエルにマングース影響 東京農工大研究
2021年03月14日
奄美大島に生息する絶滅の恐れがある希少なアマミハナサキガエルが、外来種のマングースから逃げるために脚が長くなったり、持久力が発達したりと、急速に進化した可能性があることを東京農工大学の研究チームが明らかにした。国際学術誌「Biological Invasions」で1月に発表した。マングースを駆除した後も、変化した特徴はすぐには戻らず、「島嶼(とうしょ)生物ならではの性質を短期間のうちに変化させている」と外来種の影響に警鐘を鳴らしている。
奄美大島のマングースは1979年に毒蛇ハブなどの駆除を目的に奄美市名瀬で放され、急速に分布域を拡大。希少動物を襲って島の生態系に大きな打撃を与えた。環境省の駆除によって生息数は次第に減り、現在は根絶に向けた取り組みが進められている。
アマミハナサキガエルは奄美大島、徳之島の固有種。環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類。鹿児島県の天然記念物。研究チームは2015年と16年のそれぞれ6~8月、奄美大島の森林に生息していた224匹の脚の長さを計測し、88匹に網を掛けて、逃げるためにジャンプをした回数を調べた。
平均的な体長の個体を比較すると、放獣地点に近く、マングースが多く生息していた奄美市名瀬周辺のカエルの方が、放獣地点から離れた島南部の瀬戸内町周辺よりも、すねの長さが約2・8~3・4㍉長く、網を掛けた時にジャンプした回数がおよそ9回多かった。
研究チームは、カエルを待ち伏せて捕食する在来種のヘビ類と異なり、獲物を追い掛けて襲うマングースのような強力な捕食者が新たに侵入したことで、アマミハナサキガエルが逃げ続けるために発達したと考察。
調査時点では、マングースの駆除が進んで生息がほとんど確認されなくなっていたが、変化した性質はすぐに戻ることはなく、「マングースによってカエルの形態や持久力がわずかな時間で急速に進化し、世代を越えて受け継がれた可能性がある」としている。
研究を行った元東京農工大学大学院特任助教の小峰浩隆・森林総合研究所特別研究員は「今回の研究は外来種による影響の根深さを示している。外来種による在来種の性質への影響を調べ、適切に理解することで保全の動機付けにつながるだろう」と述べた。