鹿大島嶼研が生物多様性シンポ
2020年02月04日
鹿児島大学国際島嶼(とうしょ)教育研究センターは2日、奄美群島の生物多様性に関するシンポジウムを開いた。同大学は2016年度から奄美群島の陸域、海域、山林部や、これらの自然環境と人々の生活との関わりについての研究や教育を進めており、シンポジウムで成果の一部を報告。奄美大島の林道での夜間の車両走行がアマミノクロウサギの活動に与える影響懸念などが示された。
研究は文部科学省の特別経費プロジェクトの一環。奄美市名瀬にある同センター奄美分室を研究拠点と位置付け、奄美群島の生物多様性の研究と保全への取り組みを進める。
シンポジウムは16年度から4年間の成果報告の場。▽植物班▽動物班▽水圏班▽人文班│の4班の研究内容が示された。
夜間に林道を走る車両によるアマミノクロウサギへの影響については、同センター元研究員で環境省奄美野生生物保護センター希少種保護増殖専門員の鈴木真理子さんが報告。ナイトツアーなどで夜間の交通量が多い林道にセンサーカメラを設置してウサギの出現頻度と交通量との関連を調べ、ウサギのふんに含まれるストレスホルモンを分析した。
その結果、ストレスホルモンの濃度上昇と交通量の関連は確認されなかったものの、ウサギの林道への出現は交通量が多い時期に少なかったと説明。夜間の車両通行がウサギの採食や繁殖行動に影響している可能性があると述べ、交通量増による悪影響を懸念した。
植物班は徳之島の天然林の群落構造をテーマに報告。水圏班は奄美群島のゴカイなど環形動物の記録状況などについて発表した。人文班は先史時代の薩南諸島についての知見やこれまでの研究成果などを解説した。
同大学が進めるプロジェクトは6年間が1クール。20年度からの2年間は奄美・沖縄の世界自然遺産登録を前提に、島嶼教育研究センター奄美分室を国際的な教育研究機関へ発展させ、奄美群島を中心に自然遺産地域として高く評価されるための教育研究を進めるという。
大学側は、自治体や地元の研究会などと連携して課題解決を図り、研究成果の地元還元にも取り組む考えだ。