タンカンにクロウサギ食害 大和村
2018年02月03日
地域
国の特別天然記念物アマミノクロウサギによるタンカンの果樹食害が、大和村福元盆地のタンカン農園で散見されている。研究機関が自動撮影カメラで撮影を試みたところ、クロウサギが夜間に果樹の表皮や葉部を食い荒らす姿を確認。被害樹は樹勢が低下し枯死する恐れもあるという。国や関係機関、地元の連携で保護増殖策が進むクロウサギによる食害に、タンカン生産者は困惑を隠せない。
食害は福元盆地内にある複数の農園で発生。被害農園の一つを所有する60代男性は「2012年ごろから被害樹が見られるようになり、2年ほど前から急増した」と説明。被害樹は農園の表土から約70㌢の高さまでかじられたり、枝葉が食いちぎられている。
鹿児島大学国際島嶼教育研究センター奄美分室は、男性などから情報を得て同年11月下旬に同農園で被害調査を開始。これまでに140㌃の園地内にあるタンカン果樹約650本のうち、12%で樹皮がかじられた被害樹を確認した。農園内にはクロウサギの巣穴が複数あり、被害は巣穴周辺に集中しているという。
同分室が設置したカメラには、同月24日と12月8日のいずれも未明に、枝上に飛び乗って樹皮を食べたり、地上で伸び上がって枝葉を食べようとするクロウサギの姿が映っていた。
同分室の鈴木真理子プロジェクト研究員は、マングースの防除などで生息環境が改善し、クロウサギの個体数に回復傾向がみられるとして、「クロウサギの生息地の中にある農園では起こりうる問題」と指摘する。
その上で、「農家も生活していかないといけない。(クロウサギとの)共存を目指すために、島全体で考えないといけない課題。県や自治体は効果的な対策を考えてほしい」と話した。
JAあまみ大島事業本部果樹部会の大海昌平部会長は「クロウサギの生息範囲が広がる傾向にある中、被害拡大は大きな懸念材料。他の果樹や野菜への被害の恐れもある」と農業全般への影響を指摘。関係機関の協議による対策の必要性を訴えた。
県大島支庁農林水産部の東洋行部長は「被害実態を把握した上で、可能な対策については研究機関などの協力も得て検討していく必要がある」と述べた。