IUCN 世界自然遺産、奄美・沖縄に「登録延期」勧告
2018年05月05日
地域
環境省は4日未明、世界自然遺産登録を目指す「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」(鹿児島県、沖縄県)について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関・国際自然保護連合(IUCN)が登録を延期するよう勧告したと発表した。6月24日から中東バーレーンで開かれるユネスコ世界遺産委員会で最終審査があるが、勧告通りに決まれば、今年の登録は見送られることになる。
IUCNの勧告は、▽登録▽情報照会▽登録延期▽不登録―の4段階。登録延期は下から2番目の厳しい評価で、推薦書の本質的な見直しが求められる。日本推薦の自然遺産候補地が登録以外の勧告を受けるのは初めて。
勧告では、日本が世界遺産に相当する価値として推薦書で示した「生態系」「生物多様性」の二つの評価基準について、生物が独自の進化を遂げたことや、固有種や絶滅危惧種の多さには評価を示した。
一方、生態系の基準はそれぞれの地域で推薦地が分断されていることなどから「持続可能性に重大な懸念がある」として「合致しない」と否定。生物多様性に関しては、沖縄島北部にある旧米軍北部訓練場を推薦地に含めるなど、保護の強化を条件に基準をクリアする可能性を示した。
選定した推薦地について、遺産の価値を持たない地域の排除も含めた再検討や、北部訓練場の統合、私有地の取得など推薦書の見直しが求められたほか、保護管理について、希少種を襲う野生化した猫(ノネコ)に関する対策に加えて、生物多様性を脅かす他の外来種にも対策を拡大することや、観光地の適切な管理などを課題に挙げた。
世界遺産委員会では委員国21カ国が勧告を踏まえて審議する。登録延期が正式に決まれば、推薦書を出し直した後、再びIUCNの現地調査を経て審査を受ける必要があり、登録は早くても数年後に持ち越される。
政府は2017年2月、ユネスコ世界遺産センターに「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の推薦書を提出。推薦区域は▽奄美大島 1万1544ヘクタール▽徳之島 2434ヘクタール▽沖縄島北部 5133ヘクタール▽西表島 1万8835ヘクタール―の計3万7946ヘクタール。同年10月にIUCNが現地調査を行った。
日本の世界自然遺産は1993年の白神山地(青森、秋田)と屋久島(鹿児島)、2005年の知床(北海道)、11年の小笠原諸島(東京)の4件。今のところ奄美・沖縄の他に推薦の予定はなく、国内最後の候補地とされている。
世界遺産委員会では、諮問機関が登録を勧告した文化遺産候補の「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎、熊本)の審査も行われる。
奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島 日本列島の南端、約1200キロにわたって弧状に点在する琉球列島の一部。大陸との分離・結合を繰り返した地史などによって生物が独自の進化を遂げ、希少種や固有種も含め多様な動植物が生息・生育している。
アマミノクロウサギやヤンバルクイナ、イリオモテヤマネコなど、候補地の4地域に分布する陸生動植物の86種がIUCNのレッドリストに記載された絶滅危惧種。そのうち固有種が70種を占める。