19年、奄美大島、徳之島で希少種の事故多発
2020年01月29日
今夏の世界自然遺産登録を目指す奄美大島と徳之島で、希少な野生生物の交通事故が増えている。環境省によると、2019年の交通事故確認件数は、ケナガネズミが奄美大島14件、徳之島7件の計21件に達し、両島ともに過去最多を記録した。徳之島固有のトクノシマトゲネズミが最多の4件、奄美大島固有のアマミトゲネズミは初めて1件の交通事故が確認された。同省は交通事故防止へ夜間の運転に注意するよう呼び掛けている。
ケナガネズミは両島と沖縄島の固有種。体の大きさが20~30センチとネズミの仲間で国内最大。
19年の交通事故確認件数は、奄美大島でこれまで最多だった17年(4件)の3倍超に上り、徳之島では最多だった18年(4件)を上回った。両島の死骸確認数も計67件(奄美大島57件、徳之島10件)と過去最多で、犬や猫による捕食も計5件確認された。
トゲネズミ2種は体長9~16センチほど。全身に2センチほどのとげ状の毛がある。19年の死骸確認数はアマミトゲネズミ64件、トクノシマトゲネズミ17件でともに最多。アマミトゲネズミは犬や猫による捕食が13件確認された。
ネズミ3種はいずれも国の天然記念物で、環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠB類。
奄美大島と徳之島固有の国の特別天然記念物アマミノクロウサギの交通事故は19年、計38件(奄美大島22件、徳之島16件)で、両島合わせて過去最多だった18年の40件に次いで多かった。
死骸確認数は計112件(奄美大島61件、徳之島51件)で、徳之島では犬や猫による捕食が計14件確認された。
交通事故の多発の要因は、マングースの駆除や、野生化した猫(ノネコ)の捕獲など、両島で野生生物の保護対策が進んだことに加えて、前年に餌となるシイの実が豊富だったことから、分布域や個体数の回復が進んだためとみられる。
同省によると、クロウサギやケナガネズミの事故は、山中の林道だけでなく、交通量の多い国道や県道でも発生している。奄美野生生物保護センターの早瀬穂奈実国立公園管理官は「どこにでも生き物が出て来ると意識して、ゆとりのある運転を心掛けてほしい」と注意喚起している。