島言葉継承にも思い入れ 名桜大の小嶋氏、島尾敏雄語る
2020年11月10日
芸能・文化
奄美大島ゆかりの作家で県立図書館奄美分館の初代館長も務めた島尾敏雄に関する講演会が8日、奄美市名瀬の県立奄美図書館であった。名桜大学(沖縄県名護市)の小嶋洋輔教授が「文化継承者・言語継承者としての島尾敏雄」と題して講演。島尾が残した日記や取材ノートなどを読み解いて「島の知識人」という側面から島尾の文学的な姿勢や奄美の方言に対する思いなどを考察した。
講演会は奄美図書館1階の島尾敏雄記念室で13日から開かれている企画展の一環。島尾文学ファンや郷土史研究の関係者ら約30人が聴講した。
小嶋教授は「島尾が日本の中央を代表する知識人であるからこそ、中央のメディアや奄美の人々から島の知識人としての役割を求められた」と述べ、島尾の作品や自筆の日記、取材ノートなどの内容を解説した。
その中で妻ミホの島口語りを片仮名表記で再現している点に注目し、「言葉の音を強く意識して語り口をそのまま残すことを目指していた」と指摘。「島尾が島の言葉の発音に感じた『生き生きとした感じ』を残し、伝えたいという意識が強く働いている」と考察し、「きわめて文学的な言語継承者として存在していた」と語った。
奄美図書館の島尾敏雄記念室企画展は17日まで。島尾が書いた1955年から75年までの約20年間の複製日記が展示され、当時の島の暮らしや文化などを垣間見ることもできる。