「敬天愛人の実践者」 功績と人柄に思い馳せる 龍郷で西郷菊次郎シンポ
2018年05月28日
地域
龍郷町で生まれた西郷隆盛の息子・菊次郎にスポットを当てたシンポジウム(㈱奄美有機農業研究所、志塾西郷塾など主催)が27日、龍郷町生涯学習センターりゅうがく館であった。歴史学者の松延康隆氏は「龍郷で生まれた菊次郎は奄美に対する薩摩藩の過酷なサトウキビ政策を見て育ち、差別と貧困を知っていた。父隆盛の敬天愛人の精神を実践した人物」と紹介した。
シンポジウムでは松延氏ら有識者3人が講演。約40人が参加し、指導者として国内外で慕われた菊次郎の功績と人柄に思いをはせた。
菊次郎は「菊地源吾」の名前で龍郷に潜居していた西郷隆盛と、奄美の妻愛加那の長男として1861(文久元)年誕生。2度のアメリカ留学を経験し、台湾の宜蘭支庁長(97~1902年)、京都市長(04~11年)などを務めた。
松延氏は菊次郎が宜蘭支庁長離任時に住民から引き止められたエピソードも紹介し「抗日運動が激しかった中では異例の対応。菊次郎をしのぶ碑文が現在も現地で大切にされていることが功績を表している」と話した。
志塾・西郷塾の大茂卓郎氏は「西郷菊次郎の功績」の題で講話。外債を用いて都市整備を行った京都市長としての手腕や台湾で行ったインフラ整備、産業振興などの取り組みについて語った。
永野金山(鹿児島県さつま町)100周年記念誌編集委員の黒田敏隆氏は、鉱業館長を務めた菊次郎が金鉱労働者の子どものために私財で学校を作ったことや、手植えの紅葉が現在も地元で愛されていることを紹介し「菊次郎を通して龍郷と永野の交流を深めましょう」と呼び掛けた。