メッシュ機墜落「胸が痛い」 沖永良部・与論の医療関係者
2022年03月15日
地域
沖縄県伊江村の伊江島空港で12日、入院患者や救急患者の島外搬送などを通じて離島の医療支援に取り組むNPO法人メッシュ・サポート(塚本裕樹理事長)の小型飛行機が墜落し、操縦士2人が亡くなった。同法人の飛行機がたびたび飛来していた沖永良部島、与論島では事故への悲しみが広がっている。同法人は当面の間、医療用航空機の運航自粛を発表しており、今後の患者移送について、心配の声も聞かれる。
同法人は2008年設立。当初は医療用ヘリを運航していたが、15年には南西諸島全域の搬送体制、医師などの派遣体制促進を目指し、小型飛行機での活動を始めた。
活動資金は寄付で賄い、無償で患者を搬送。奄美群島では南3島を中心に活動し、小型飛行機の活動実績は20年度149件。21年度は3月13日現在、142件。
事故発生を受け、朝戸医院(和泊町)の朝戸末男院長(73)は「(公的)ドクターヘリの搬送対象とならない準救急患者や、旅客機、フェリーでの移動が困難な患者の島外医療機関への転院の際など、メッシュ・サポートに移送を依頼しており、患者さんも大変感謝していた。悲しい事故で、胸が痛い」と肩を落とした。
与論町のパナウル診療所元所長で、現在は徳島県と行き来しながら同島の医療に関わる古川誠二さん(72)は「事故後に塚本理事長と連絡を取ったが、さぞ無念だったろう。亡くなった指導役の操縦士は、毎回小型機に同乗していて、面識もあった。理事長と同様、『離島の医療格差解消。救える患者の命を救いたい』との強い思いで活動されていたように思う」と哀悼の意を表した。
古川さんは「奄美ドクターヘリが県立大島病院への急患搬送を原則としているのに対し、与論島民は生活圏で、地理的にも便利な沖縄本島の医療機関への搬送を希望する場合が多い。ドクヘリを補完する上でも与論でメッシュ・サポートが果たしてきた役割は大きく、今後さらに増していくはずだったのに」とも語った。
沖永良部・与論地区広域事務組合の今井力夫管理者(知名町長)は「急患搬送体制の構築は本来、鹿児島、沖縄といった行政区域に捉われず、広域行政で進めるべきだが、公的なドクヘリが地域のニーズに十分に対応できていない現状もあり、それを民間のメッシュ・サポートが補ってくれていた。今回の事故を機に、離島地域での救急搬送体制などの課題解決に向けた広域的な議論を、より真剣に進めないといけない」と述べた。