与論から沖縄へ初急患搬送 メッシュ・サポート
2021年06月11日
地域
離島、へき地の医療格差改善のため、医療用航空機を活用した医療支援活動に取り組む沖縄県のNPO法人メッシュ・サポート(塚本裕樹理事長)は9日、初めて与論島から沖縄本島への急患搬送を行った。与論島では島外への急患搬送について、患者やその家族の意思を尊重し、奄美大島だけでなく、与論に近い沖縄県の医療機関へも搬送できる体制構築を求める声が上がっており、関係者は「貴重な取り組み」と喜んでいる。
同法人によると、この日は与論徳洲会病院からの要請で、専門的治療が必要な80代女性を沖縄県島尻郡の南部徳洲会病院(沖縄県島尻郡)まで搬送。与論徳洲会病院の医師も同乗した。所要時間は与論空港から那覇空港まで飛行機で40分、那覇空港から南部徳洲会病院まで救急車で25分の計65分だった。
同法人は2008年設立。医療用ヘリの運営を行い、15年からは南西諸島全域の搬送体制、医師などの派遣体制促進を目指し、医療用飛行機での活動を始めた。活動資金は法人への寄付金で賄い、無償で搬送。奄美群島では与論島にこれまで2回の帰島搬送を行ったほか、奄美大島、徳之島、沖永良部島でも活動実績がある。
与論島から沖縄への急患搬送は、長年与論島の医療充実に貢献し、昨年度閉院したパナウル診療所の古川誠二医師(71)からの相談を受け、同島で説明会を開くなど実現に向けて話し合いを進めてきた。
徳島県と行き来しながら、現在も与論島の医療に携わる古川医師は「与論島では病気で治療が継続する場合、沖縄の病院をかかりつけ医にしている島民が多い。沖縄の病院に過去のデータがあるので治療しやすいし、治療後に通う場合も地理的文化的に沖縄が便利。選択肢の一つとして今後も利用できる形をつくってほしいと思う」と話した。
同法人の塚本理事長(46)は「与論島の島民や医療機関には、沖縄に搬送してほしいというニーズがある。沖縄に搬送できるシステムを安定的に運営できるような体制構築を、みんなで目指していければ」と力を込めた。