野生生物持ち出し急増 昆虫採集わな設置も マナー向上、監視強化へ 奄美大島・希少野生生物保護対策協
2021年07月09日
自然・気象
奄美群島希少野生生物保護対策協議会(会長・宮澤泰子県自然保護課長)の奄美大島地区の会合が8日、奄美市名瀬であった。環境省は島内で6月下旬以降、昆虫採集用トラップの設置や、空港から大量の野生生物を持ち出そうとする事案が急増していると報告。多くは法令違反となる希少種の採集や保護区域内の行為ではなかったが、全ての動植物の採取が禁止されている国立公園の特別保護地区内でもトラップが見つかった。世界自然遺産登録に伴う来島者の増加を見据えて、関係機関で採集マナーの向上や、監視体制の強化に取り組む。
環境省によると、トラップは果物を入れたネットを木につるして昆虫をおびき寄せるものなどで、6月下旬以降、島内で15件を確認。多い所では70個以上見つかった。ほとんどは法による規制がない国立公園区域外に設置され、採集者への聞き取りでは、法令で採集が禁止されていないクワガタ類などが対象だった。
奄美空港では7月に入って、シリケンイモリやクワガタ類など、希少種ではない野生生物を大量に持ち出そうとする事案が増加。動物を機内に持ち込めない航空会社では、大量の昆虫類が放棄されることもあったという。
事務局の県自然保護課は「手慣れた採集者の多くは関係法令を熟知し、違反にならないように大量採集と持ち出しが行われている」と指摘。採集者に昆虫の大量採集や多数のトラップの設置は控えることなど、採集マナーの向上を呼び掛けるチラシを作成し、空港や港、公共施設などで配布する取り組みを提案した。
会合には国や県、地元市町村と関係団体から約40人が出席。「希少種に限らず、条例などで普通種も持ち出しを禁止できないか」「空港で希少種かどうか判断できる人がいない。持ち出せる数を制限するなど分かりやすくした方がいい」などの意見があった。
県は8~9月ごろ、奄美大島と徳之島の空港と港で希少種島外持ち出し防止キャンペーンを行い、旅行者や地域住民に普及啓発を図る。